年始のご挨拶(2020/1/5)

年が明けました。

 

昨年は代表の身内の不幸のため、新年のお祝いの言葉を書けませんでした。

実は昨年、その後にも不幸があり喪が明けておりません。

今年もお祝いの言葉を書くことができません。

大変恐縮ですが、ご理解いただければ幸いです。

 

今年は、元日のコンビニ営業がネットニュースになっていました。

人手不足や過酷な労働の象徴であり、今年も注目度は高そうですが、

もちろん根っこには少子高齢化による労働力人口の減少があります。

時代は令和になりましたが、時間は連綿と続いています。

 

一方で、今年は東京でオリンピックが開催されます。

昨年はラグビーW杯が日本に明るい話題をもたらしてくれました。

今年もスポーツが日本を明るくしてくれることを期待しています。

 

今年もよろしくお願いいたします。

年末のご挨拶(2019/12/28)

今年も一年、当ブログをご愛読いただき誠にありがとうございました。

 

今年は、元号が変わり、新しい時代に入ったように感じます。

ただ現実において、一つのタイミングで決然と何かが変わることは、あまり無いのでしょう。

過去と未来をつないで、少しずつ移り変わっていくものだと思います。

 

労働法では、働き方改革の下、労働基準法が改正されました。

多くの企業と多くの労働者に影響のある変化です。

うち、時間外労働の上限規制において、中小企業への適用は来年4月からです。

これらも来年以降、徐々にその効果が表れていくことと思います。

 

年末になって、厚生労働省関係の電子申請促進の動きが具体的に表れ、

行政関係の情報化も、より強力に推進されるものと思います。

当然のことながら、これは厚生労働省のみならず、社会全体の変化です。

生き残るためには、変化に適応し続けなければいけません。

 

少子高齢化の中、そして労働力人口減少の中、

どのように経営していくのか。

どのように働いていくのか。

より豊かな人生が送れるような、令和の時代になって欲しいと願います。

 

今年のブログはこれで最後となります。

皆様にとって来年も良い年になることを祈念して、年末のご挨拶とさせていただきます。

日本年金機構からの電子申請の説明依頼書の配布(2019/12/21)

前回、雇用保険の電子申請利用促進の取り組みの一環として、

ハローワークの窓口来所の受付時間が短縮されるというブログを記載しました。

 

今度は、日本年金機構の電子申請の利用促進について情報提供がありました。

内容としては「電子申請の説明依頼書」の配布を順次行います、とのことです。

 

令和2年4月から、特定の法人について電子申請が義務化されます。

詳細は以下の東京労働局のHPをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/000511981.pdf

 

実はこれと同じタイミングで、電子申請の方法が増えることになっています。

現在は「電子証明書」を取得して、それを利用して電子申請をする仕組みなのですが、

新しい方法は「電子証明書」を取得しなくても、IDとパスワードで電子申請ができます。

 

どうやらこのID・パスワードの取得方法などについて

会社に出向いて説明をしていただけるようで、順次配布されるのはその依頼書のようです。

なお、配布対象は従業員が101人以上で紙による申請を行っている事業主とのことなので、

比較的大きい会社が対象となっています。

 

このIDとパスワードを利用して電子申請する方式(「GビズID」といいます)については、

すでにサイトがあり、アカウントの発行が始まっています。

しかし中身が公開されていないので、具体的に何ができるのかはまだ分かりません。

 

行政が手続きの電子化を急いでいるのはよく分かります。

利用しやすく、かつ、安全性の高い仕組みを作ってほしいものです。

ハローワークの窓口来所の受付時間変更(2019/12/13)

東京都社会保険労務士会を通じて、ハローワークの窓口来所の受付時間変更の通知がありました。

電子申請の利用促進のため、雇用保険適用窓口の来所受付時間を

令和2年1月から、8:30から16:00までとするとのことです。

 

事業主などが行う申請・届出(事業所・被保険者関係手続、雇用継続給付関係手続)が対象で、

電子申請への取り組みを加速するため、雇用保険適用窓口の受付を16時までとし、

16時以降は電子申請による申請・届出の集中処理を行う、ということです。

 

詳細は以下の東京労働局のHPをご参照ください。

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/newpage_00448.html

 

ただし、ハローワークによって対応に差があるようです。

16時以降でも受付を行うとするハローワークもあるようですので、

もしハローワークで直接手続きをされる場合には、

事前に確認することをお勧めします。

 

電子申請は、来年、現状とは異なる仕組みのシステムが開始される予定です。

まだ詳細は分からないのですが、電子化の進展は止められないものと考えます。

法律的なことだけではなく、手続き方法についても、随時ブラッシュアップしていきます。

電通に対する是正勧告(2019/12/7)

大手広告会社の電通に対して、労働基準法及び労働安全衛生法に違反したとして、

今年9月に、三田労働基準監督署から是正勧告が出ていたとの報道がありました。

 

電通は、平成30年度において、時間外労働の上限を、

原則として月45時間、事前申請で月75時間に延長できる三六協定を締結していたところ、

営業関連部署で月75時間を超えた事例が4件(最長は月156時間54分)あり、

また事前申請をせずに上限を延長した事例も6件あったとのことです。

 

平成30年度のことのようなので、時間外労働の上限規制が始まる前です。

この事案が平成31年度であれば、より深刻な処分がなされていたかもしれません。

また報道も、もう少し加熱したと考えられます。

 

電通は、過去に2度の過労死事件が発生しています。

平成29年の過労死自殺の事件は記憶に新しいところです。

この事件をきっかけに、時間外労働の上限規制が法制化されたとも言えます。

 

電通は、過去に繰り返し是正勧告が出されています。

大きな組織になれば、その体質を急激に変えるのは困難なのでしょう。

それでも、人の生命身体を守るために、変わっていただきたいと考えます。

 

時間外労働の上限規制が始まったこの4月以降にこそ、

電通も、労働行政も、真価が問われるところではないでしょうか。

在職老齢年金制度の見直し議論(2019/11/29)

60歳以上の方で、厚生年金を受給している方が働いている場合、

一定以上の収入があると、年金額を抑制する「在職老齢年金」という制度があります。

これは、給付と負担のバランスの中で、

稼ぎの多い方には少し年金支給を抑えさせてもらおうというものです。

 

この制度は、働くと、もらえる年金が抑制されることになるため、

まだ働ける方がいても、その意欲を阻害するのではないかという意見があります。

そのため、この制度の廃止や、収入の基準を上げることで、

働く意欲が阻害されないようにしてはどうかという議論がされています。

 

廃止や基準の引き上げを行った場合、年金支給額が増えるため、年金財政にはマイナスです。

また、高収入の方への優遇になるため、反対意見も多いようです。

特に廃止というのはインパクトが大きく、現実感が薄いように思いますが、

基準引き上げも難しいようで、とりあえずは現状維持の見通しのようです。

 

本来的に、年金制度は保険料を拠出した方に対し、それに見合う給付がなされることが原則です。

それを考えると、在職老齢年金の制度自体が原則に反する考え方ではあります。

ただ一方で、給付と負担のバランスを図り、

所得の再分配を行うことも政策的に必要なことだと考えます。

 

日本には定年制度が根付いていますが、在職老齢年金の制度も定年と密接に関係しています。

いつまで働くかということを年齢で区切ることは、分かりやすい半面、

その考え方自体が、働ける人を働かない人に変えてしまっているのかもしれません。

職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案(2019/11/23)

10月21日、厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、

「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」

が示されました。

同日に、日本労働弁護団から修正を求める緊急声明が出るなど、内容については賛否あるようです。

 

かねてよりパワーハラスメントは定義が難しく、

今回の素案においては、捕捉の意味を込めてか、

パワハラに該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例が示されています。

 

報道でも指摘されていましたが、該当しないと考えられる例には、

確かに少し首をひねりたくなるものもありました。

 

例えば、ごく一部だけを抜粋しますが、

「遅刻や服装の乱れなど…略…強く注意をすること」

という表現が、パワハラに該当しないと考えられる例の中にあります。

 

さて「強く注意をすること」というのは、どういうことなのでしょうか。

服務規律を遵守できていない労働者に対して注意をするのは当然のことだと思うのですが、

ここで重要なのはその注意の仕方であって、

それによっては、やはりパワハラに該当することもあり得るように思います。

 

具体例を示すことで議論を促す狙いがあるのかもしれませんが、

改めて、パワハラに該当する行為を示すことの難しさを感じました。

ただこういった考え方が示され、議論が行われること自体が重要であり、

その結果として、より良い職場環境の整備が進むことを願います。

厚生年金保険の規模要件の拡大(2019/11/16)

厚生年金の適用拡大に関する議論が進んでいます。

 

現在、法人の事業所は全て厚生年金の適用事業所とされています。

その適用事業所において、いわゆるパートタイマー(短時間労働者)とされる方でも、

所定労働日数や所定労働時間が、いわゆるフルタイムで働く方の4分の3以上になっている方は、

厚生年金の被保険者になります。

 

それに加え、平成28年10月からは、厚生年金の被保険者数が常時「501人以上」の事業所では、

以下のような条件の方は、4分の3未満であっても厚生年金の被保険者となることになりました。

・週の所定労働時間が20時間以上あること

・雇用期間が1年以上見込まれること

・賃金の月額が8.8万円以上であること

・学生でないこと

 

今回の議論では、その規模要件を「501人以上」から「51人以上」とする方向のようです。

有識者会議などでは「撤廃」(=規模要件無し)という方向性が示されているようですが、

厚生年金保険料は労使折半であるため、企業負担への懸念もあり、

「51人以上」という規模要件で調整が進められているようです。

 

この規模要件の引き下げは、数年かけての段階的な引き下げや、

企業側への支援策も併せて議論される見込みとのことです。

経営者としては、少なくとも状況や方向性を認識しておく必要はありそうです。

 

現在も無年金や低年金で厳しい生活の方もいらっしゃると思います。

そして、低所得のため年金保険料を納められない方々に対する、今後の低年金対策も必要です。

また一方で、保険料が支え手を圧迫しすぎると、逆に支えられなくなります。

給付と負担のバランスについて、より深い議論をしていただければと思います。

船後議員の初質疑(2019/11/9)

令和元年11月7日、れいわ新選組の船後参議院議員が、文教科学委員会で初の質疑を行いました。

船後議員は難病のALSで、言葉を発することが難しく、

パソコンによる電子音声や秘書による代読などで質問をしていました。

 

船後議員はもともと用意していた質問をしただけでなく、

その場で追加の質問も2点ほど行ったそうなので、

ちゃんと質疑のキャッチボールができたようです。

 

障害者雇用は、従来から取組が行われているところですが、

理念の崇高さはありつつも、現場としてはなかなか難しいところだと思います。

 

ただこうした公の場で特に会話が不自由な方が

国会議員として質疑をする姿をテレビで見ると、

障害を持つ方でも働ける、という希望を感じることができました。

また、問題の当事者として、説得力も違ってくるように思います。

 

もちろん、電子機器や秘書の代読を経由しているので、

議員本人の意思が正確に表現されているのか。

また、質疑の時間は、やはり多くかかってしまうとか、

直接的にも間接的にも多くのサポートが必要であることは否めません。

 

民間の会社で、これだけの対応をすることは決して容易ではありません。

ただそういったことも含めて公の場で行われていくことで、

障害を持つ方が働ける環境整備が、少しずつでも進んでいくことを期待します。

 

働き方改革という言葉が、使う人によっては虚しく感じることがあるのですが、

船後議員の活動は、それ自体が、働き方改革と言えるのではないでしょうか。

令和元年度過重労働解消キャンペーン(2019/11/2)

今年も、厚生労働省では「過重労働解消キャンペーン」を実施しています。

実施期間は、令和元年11月1日(金)から11月30日(土)までの1か月間です。


主な実施事項のうち「過重労働が行われている事業場などへの重点監督の実施」について、

以下のように公表されています。(内容は昨年と同様です)

 

ア.監督の対象とする事業場等

 ①長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等

 ②労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等から、

  離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等

 

イ.重点的に確認する事項

 ①時間外・休日労働が36協定の範囲内であるか等確認し、法違反が認められた場合は是正指導

 ②賃金不払残業がないかについて確認し、法違反が認められた場合は是正指導

 ③不適切な労働時間管理については、労働時間を適正に把握するよう指導

 ④長時間労働者に対しては、医師による面接指導等、健康確保措置が確実に講じられるよう指導

 

ウ.書類送検

 重大・悪質な違反が確認された場合は、送検し、公表
 

過重労働解消キャンペーン(厚生労働省HP)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoukijun/campaign.html

 

監督指導の結果、公表された場合や1年間に2回以上同一条項の違反について是正勧告を受けた場合、

ハローワークにおいて、新卒者等を対象とした求人を一定期間受理せず、

また、職業紹介事業者などに対しても、同様の取り組みを行うよう協力要請しているとのことです。

 

今年度から、大企業での時間外労働の上限規制が罰則付きとなりました。

中小企業でも来年4月1日から適用になります。

過重労働にならないよう、労働環境の整備をお願いいたします。

過重労働解消相談ダイヤル(2019/10/25)

厚生労働省では、毎年11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施しています。

その一環として、10月27日に、都道府県労働局の職員による

無料電話相談「過重労働解消相談ダイヤル」が実施されます。

 

●フリーダイヤル 0120−794−713

●受付日時    10月27日(日)9:00〜17:00

 全国どこからでも、携帯電話やPHSからも無料で利用可能

 匿名での相談も可能

 

この相談ダイヤルでは、過重労働をはじめとした労働問題全般にわたる相談を受け付け、

労働基準法や関係法令などの考え方の説明や、

相談者の意向を踏まえた管轄労働基準監督署への情報提供、関係機関の紹介など

相談内容に合わせた対応を行うとのことです。

 

詳細は下記のURLより、厚生労働省ホームページをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000181245_00003.html

 

昨年実施した際には、501件の相談が寄せられ、

その中で最も多かったものは長時間労働・過重労働で204件、

続いて賃金不払い残業が173件となっているそうです。

 

著しい過重労働や悪質な賃金不払いなど、少しでも減ることを願っています。

アニメ制作会社での長時間労働(2019/10/19)

ネットニュースで、あるアニメ制作会社の社員が、

未払い残業代を求めて会社を提訴したという記事を見ました。

今年の春には、他のアニメ制作会社でも同様に未払い残業代を巡る訴訟がありました。

 

いずれのケースでも、いきなり会社が提訴されたわけではなく、

労働基準監督署からの是正勧告を受け、労働組合との労使交渉も行われたうえで、

それでも会社側の対応が誠実であると感じることができず、訴訟となったようです。

 

ネットの記事は、基本的には原告の主張に沿って掲載されています。

そのため、会社側の主張にも耳を傾けるべきなのかもしれません。

 

しかし、そこに記載のあることが事実であるとすれば、いずれのケースにおいても、

会社は過労死ラインを認識しつつ、それでも状況を改善するという方向には進まず、

なんとかして、人を安く、長く働かせようとしているように感じられます。

 

なにより、どうやら法律の知識がある程度あり、

その上で、会社の都合の良いようにだけ利用しようとしているのではないか

と思われるところが、悪質に感じられます。

 

実は、どちらのアニメ制作会社が作ったアニメも見たことがあり、

素直に、面白い、楽しいと思っていました。

このようなニュースはとても残念です。

 

日本のマンガやアニメは素晴らしいものだと思います。

こういった現場の方の声によって、少しずつでも働く人の環境が整備され、

業界が継続して発展していくことを願っています。

在職老齢年金制度の見直し議論(2019/10/12)

10月9日に、第11回社会保障審議会年金部会が開催され、

厚生労働省のHPに、在職老齢年金制度の見直しについての資料が掲載されています。

 

詳細は下記のURLより、厚生労働省ホームページをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212815_00013.html

 

在職老齢年金制度とは、働いて一定の収入がある高齢の方について、

老齢厚生年金及び給与や賞与の額に応じて、老齢厚生年金の一定額を支給停止にする制度です。

 

支給停止にならない金額は、年齢に応じて異なっており、

現在、60歳から65歳になるまでは、老齢厚生年金及び給与や賞与の額の合計が28万円以下、

65歳以上ではその合計が47万円以下であれば、支給停止になりません。

 

これは、年金の給付と負担の関係から、

少し余裕のある高齢の方の給付を抑制させてもらおうというものです。

しかし一方で、働くとせっかくもらえる年金が下げられてしまう、という仕組みであり、

高齢の方の就労意欲を妨げているのではないかという意見があります。

 

今回の資料を見ると、65歳以上の方の47万円という基準額を、62万円に引き上げるケースと

在職老齢年金の完全撤廃というケースが検討されたようです。

 

年金財政の健全性を保つうえで給付と負担のバランスは重要です。

また一方で、働いたらその恩恵を受けるというのも、当然のことだと考えます。

いくつになっても働きたいと思える社会になることを願います。

平成30年度長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果(2019/10/5)

厚生労働省は、平成30年度に長時間労働が疑われる事業場に対して実施した、

労働基準監督署による監督指導の結果を公表しました。

 

詳細は下記のURLより、厚生労働省ホームページをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06801.html

 

 1.対象事業場:29,097事業場

 このうち、20,244の事業場(69.6%)で労働基準関係法令の違反あり。

2.主な違反内容(1.のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場)

 (1)違法な時間外労働があったもの :11,766事業場(40.4%)

 (2)賃金不払い残業があったもの :1,874事業場(6.4%)

 (3)過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの :3,510事業場(12.1%)

3.主な健康障害防止に関する指導の状況

 (1)過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,526事業場(70.5%)

  うち、時間外・休日労働を月80時間以内に削減するよう指導したもの: 11,632事業場(56.7%)

 (2)労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,752事業場(16.3%)

 

平成29年度(前年度)は、実施事業場数が25,676件で、

このうち、18,061の事業場(70.3%)で労働基準関係法令の違反ありでした。

前年度に比べ、違反率は微減ですが、実施事業場数が3,421件も増えています。

2年度前の実施事業場数は、23,915件だったので、2年で約5千件増えたことになります。

 

会社様とお話をしていると、自分のところには来ない、と考えている方もいらっしゃいます。

しかし、行政としては働き方改革を見据えて、監督を強化しているように思われます。

今後より一層厳しくなるものと考えられます。

 

また一方で、行政の動きというだけでなく、

より良い職場環境づくりの一環として、前向きに取り組んでいただければ幸いです。

消費税増税と給与計算(2019/9/28)

いよいよ10月から消費税が10%になります。

弊所でも、わずかではありますが、消耗品を多めに購入したり、

システムの保守サービスを9月のうちに更新したりすることで、節約を図ってみました。

 

さて、この消費税増税は、給与計算に影響を与えるものでしょうか。

基本的に給与や賃金は、消費税の課税対象ではありません。

よって、消費税の影響はありません。

 

一方で、業務委託や請負業務の報酬は、消費税の課税対象となります。

稀ではあると思いますが、給与や賃金と、業務委託料などを混同してしまい、

誤解して計算をしてしまうこともあるようですので、ご注意いただければと思います。

 

もしこの混同があるとすれば、

もしかしたら、そこには労働者性と事業者性という別の論点が隠れているかもしれません。

 

ただ、何かの実費に相当する金額を給与の一部として支給している場合、

典型的には、通勤にかかる定期代に相当する金額、いわゆる通勤手当などを支給していれば、

その通勤費自体が増税の影響を受けると思いますので、その金額に変更があるかもしれません。

その意味では給与計算に影響があります。

 

そして、その通勤手当の変更などが、

社会保険における固定的賃金の変動に該当してくることになります。

ここでも給与計算に影響があると言えます。

 

直接的な影響とは言えないかもしれませんが、

間接的には消費増税が影響してきますので、ご留意いただければと思います。

働くということ(2019/9/22)

働く、とは何でしょう。

お客様とお話をしていると、よく考えます。

 

働く、というのは労働者としての働くもあれば、

請負業者として仕事をすることも、働くと言います。

 

実は、労働基準法の条文には、労働や労働時間についての定義がありません。

法律的に考えるヒントとしては、

労働基準法コンメンタール上(厚生労働省労働基準局編)に、以下のように記載があります。

 

「「労働」とは、一般的に、使用者の指揮監督のもとにあることをいい、

 必ずしも現実に精神又は肉体を活動させていることを要件とはせず、…」

 

ただこの「現実に精神又は肉体を活動させていることを要件とはせず」という文言は、

経営者の方からすると、なかなか受け入れずらいところなのだろうと思います。

 

もしかしたら、経営者に限らず、労働者の中でも賛否のあるところかもしれません。

職場で「しっかり働こう」という掛け声は、具体的には何を意味しているのでしょう。

人によって様々な気がします。

 

なお、コンメンタールは行政の解釈であり、上記はその労働に関するほんの一節です。

この記述だけで何かの判断をするのは避けていただきたいのですが、

要は、世間、法律、行政、経営者、労働者、果ては各個人によって、

それぞれ働くことへの考え方や意義は違うのだよなと感じます。

 

一方で、コンプライアンスが重視される中、

法律的な考え方を知っておくことは、経営者の方々にとって大事なことです。

弊所としても、そのお手伝いができるよう努めていきたいと思います。

平成30年度監督指導による賃金不払残業の是正結果(2019/9/16)

令和1年8月8日、厚生労働省HPにおいて、

平成30年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、

労働基準法違反で是正指導した結果が公表されました。

是正結果のポイントとして、以下のように掲載されています。

 

1.是正企業数1,768企業(前年度比102企業の減)

  うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、228企業(前年度比34企業の減)

2.対象労働者数 118,837人(同89,398人の減)

3.支払われた割増賃金合計額 125億6,381万円(同320億7,814万円の減)

4.支払われた割増賃金の平均額 1企業当たり711万円、労働者1人当たり11万円

 

なお、当該資料は、監督指導を行った結果、割増賃金を支払った金額が、

1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。

 

詳細は、以下の厚生労働省HPをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06128.html

 

今年(2019年)4月から、労働基準法が改正になり、

大企業には時間外労働の上限規制が適用になっています。

中小企業では、1年間猶予されており、来年4月からの適用です。

 

これに合わせ、労働基準監督署も監督体制を強化することが考えられます。

労働基準監督官の増員も行われているようですので、

より適切な労務管理に努めていただければと思います。

内定辞退率の販売(2019/9/7)

就職や転職活動で使われる「リクナビ」を運営するリクルートキャリアは、

採用活動を行う企業に対し、学生の内定辞退率を予測するサービスを販売し、

これが職業安定法に違反するとして、9月6日、厚生労働省から行政指導を受けました。

(同サービスは8月4日にすでに廃止されています)

 

このサービスは、8月26日にも、個人情報保護委員会から、

個人情報保護法違反に当たると判断され、是正を求める勧告を受けていました。

 

平成29年に改正された個人情報保護法は、

ビッグデータの利活用の推進をその目的の一つとしていました。

今回のリクナビにおける内定辞退率の販売も、ビッグデータの扱い方の一例であると思います。

確かに、人材確保に四苦八苦している採用側としては有益なデータでしょう。

 

今回の内定辞退率は、報道を見る限りでは、

利用者のサイトの利用方法からAIが判断しているようで、不確定なところも多い気がします。

そのため採用側企業も、それを決定的な要因としていたかは疑問です。

一方で、影響は無いと言われると、それはそれでにわかには信じがたいところです。

 

企業によっては、内定辞退を防止するために活用したということもあるようですが、

そのサービス提供のタイミングや経緯によっては、その理由も若干苦しいように感じます。

 

ビッグデータというものが、思いもかけない方法で、思いもかけないところで利用されれば、

個人としては見えない不安を抱えて生活しなければなりません。

それが有益な情報であるならば、人が生活しやすくなるよう、

建設的に活用されていくことを望みます。

財政検証2019(2019/8/30)

令和1年8月27日、厚生労働省のHPにて、

将来の公的年金の財政見通し(財政検証)の資料が掲載されました。

 

厚生労働省HP

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html

 

財政検証とは、公的年金制度が長期的な制度であることから、

社会や経済の変化を踏まえ、長期的な年金財政の健全性を定期的に検証するものです。

 

いくつかの前提で検証されていますが、いずれにしても年金の支給額は、減少傾向にあります。

ただこれは織り込み済みのことであり、それに対するいくつかの対応策も示されています。

 

財政を健全化するためには、大きく分けて2つの方法しかありません。

1つは給付を減らすことであり、もう1つは負担を増やすことです。

いずれの対応策も記載されていますが、

最も力点が置かれているように見えるのは、被用者保険の更なる適用拡大のようです。

 

これは負担を増やす方向の対策であり、簡単に言えば、

現状は厚生年金の負担をしていない方々にも、負担していただきましょう、という方法です。

 

しかし、この中には、目の前の生活が苦しい方々も多く入っていると考えられます。

容易に受け入れてよい提案とは言えず、より広く深い議論が必要でしょう。

年金制度は目先の問題ではなく、継続的に議論すべき問題です。

改めて今後の議論が進み、多くの方が選挙において意思表示されることを期待します。

令和1年度地域別最低賃金の改定額答申(2019/8/24)

 

厚生労働省のHPで、令和元年度の地域別最低賃金の改定額が公表されています。

この改定額は、異議申出に関する手続きを経た上で、都道府県労働局長の決定により、

10月1日から 10月上旬までの間に順次発行される予定です。

 

主な東京近県では、以下のような最低賃金時間額となっています。

・東京  1,013円(平成30年度 985円) 発効年月日:令和1年10月1日

・埼玉   926円(平成30年度 898円) 発効年月日:令和1年10月1日

・千葉   923円(平成30年度 895円) 発効年月日:令和1年10月1日

・神奈川 1,011円(平成30年度 983円) 発効年月日:令和1年10月1日

 

詳しくは、下記のURLより厚生労働省のHPをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06141.html

 

ついに、東京都と神奈川県で時間額が1,000円を超えました。

都内では、すでに時給1,000円を超える募集広告も多く見かけますが、

時給1,000円ちょうどで募集をかけている案件も見受けられますので、

時給が上がる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

最低賃金の最高額は東京都の1,013円、最低額は15の県での790円です。

その差223円(昨年度224円)で、差額は昨年比で1円縮小しましたが、

引き続き、大きな地域格差が存在しているように感じます。

 

改定額の全国加重平均額は901円(昨年度874円)ですので、

現状の推移を続けられれば、数年のうちに全国加重平均額が1,000円を超えることになります。

お気軽に
お問合せください

<受付時間>
10:00~18:00
※土日祝日は除く

ヤマシタヤ
社会保険労務士事務所

住所

〒102-0074 
東京都千代田区九段南3-8-11 飛栄九段ビル1001

受付時間

10:00~18:00

定休日

土日祝日