政府のシステムに対する不信感(2020/5/22)

日本はデジタルガバメントを推進すると言ってきたのですが、

政府の用意するシステムが、あまり実用的でないことが浮き彫りになりつつあります。

 

雇用関係とは離れますが、特別定額給付金の申請にあたって、

当初は電子申請が迅速であるとのことで、電子申請を利用された方も多いと思いますが、

実際の審査においては、役所の職員が手作業で対応しており、

あまりにも負荷が大きいということが報道されています。

 

労働社会保険分野でも電子申請が推進されており、

eGovという仕組みで、その利用が進められてきました。

ただ、このeGovの仕組みの中でも、行政での審査は手作業で行われており、

効率性が損なわれているという指摘がありました。

 

春は入退社が多い季節ですので、例年手続きの処理は滞りがちですが、

今年はコロナの影響もあると考えられ、遅れが著しいように感じます。

さらに雇用調整助成金では、オンライン受付システムにおいて不具合が生じ、

個人情報の流出を招き、稼働の延期という事態になりました。

 

今回のコロナ対応において、システムを利用した対応で成果を上げた国が多くありますが、

日本は、残念ながら、うまく活用できていないと言わざるを得ません。

これは一朝一夕の話ではないので、つまり元からシステム構築が不得手だということです。

 

いま、マイナンバーを銀行口座と紐づけようという動きもあるようです。

しかし作業が効率的に進まない本質は、そこではないように思います。

 

今回の経験を謙虚に受け止め、分析し、ぜひ今後に活かしてほしいと願います。

新型コロナウイルス感染による労災(2020/5/16)

令和2年5月15日、厚生労働省は新型コロナウイルス感染による労災を初めて認定しました。

医療従事者の方と、生活関連サービス業に従事する方の2名とのことです。

 

医療従事者、介護福祉業、接客業、配送業など、

社会生活を支えるために働いている方々は、どうしても感染リスクが伴うものと考えます。

新型コロナウイルスによる感染が労災と認められることにより、

少しでも安心感をもって職務に従事していただけることは重要なことだと思います。

 

新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについては、

厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)のページのうち、

「7 労災補償」の項目をご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html

 

また、新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて(通達)は

以下のリンクよりご参照いただけます。

https://www.mhlw.go.jp/content/000626126.pdf

 

14日時点での業務による感染で労災を申請した人は、全国で39人。

うち医療従事者が19人、介護福祉関係が11人などとなっているようです。

 

緊急事態宣言が解除された県もあります。

未だに解除されていない都道府県でも、感染の傾向は抑えられてきており、

明るい兆しは見えてきているのかなと思います。

労働保険の年度更新期間の延長について(2020/5/9)

前回のブログにて、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業主についての

厚生年金保険料等の納付猶予の特例について記載しました。

この納付猶予と同様の措置が、労働保険料についても行われます。

 

詳細は厚生労働省の以下のHPよりご確認ください。

(労働保険料等の納付猶予の特例について)

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000627591.pdf

 

労働保険料ついては、それに加えて、年度更新の期間延長も行われるようです。

例年は、6月1日から7月10日までに労働保険料の申告等を行うことになっていますが、

今年はその期間を6月1日から8月31日までの3カ月間に延長するとのことです。

 

詳細は厚生労働省の以下のHPよりご確認ください。

(労働保険の年度更新期間の延長について)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11167.html

 

上記の施策は、いずれも猶予したり、延長したりしているだけであり、

やらなければいけないことには変わりありません。

ただ、コロナ対策が長丁場になるとの認識の中で、

少し先に延ばせることの一つとして検討してもよいかもしれません。

厚生年金保険料等の納付猶予の特例(2020/5/2)

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業主について、

令和2年5月1日より、厚生年金保険料等の納付猶予の特例が実施されました。

 

もともと猶予の制度はあったのですが、元来の制度では担保の提供が必要であったり、

猶予の期間も延滞金がかかるなどの使いにくい点がありました。

今回の特例では、担保の提供が不要になり、延滞金もかからないこととなりました。

ただし、あくまで猶予であって免除ではなく、最終的には納付が必要です。

 

対象となる事業所は、

①新型コロナウイルスの影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、

 事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること

②厚生年金保険料等を一時に納付することが困難であること

など、いくつかの条件を満たす事業所となります。

 

なお、ここで言う「厚生年金保険料等」とは、日本年金機構に納付すべき以下の保険料です。

・厚生年金保険料

・健康保険料(協会けんぽのみ)

・介護保険料(協会けんぽのみ)

・子ども・子育て拠出金

 

また期間としては、

令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する厚生年金保険料等が対象となっており、

既に納期限が過ぎている厚生年金保険料等についても、遡って特例を利用できるとのことです。

 

詳細は日本年金機構の以下のHPよりご確認ください。

・新型コロナウイルス感染症の影響により厚生年金保険料等の納付が困難となった場合の猶予制度

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202003/20200304.html

・厚生年金保険料納付猶予相談窓口

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202004/20200422.html

 

上記相談窓口に電話で確認したところ、

この手続きは、直接的に社会保険料の納付に関するものであるため、

社会保険労務士でも代行は「不可」とのことでした。

(ちなみに電子申請もありません)

 

申請書には財務状況を記載する必要があり、確かに社労士は不向きかもしれません。

ただ準備する書類はさほど多くなく、また根拠資料の準備が難しい場合でも、

日本年金機構の方が聞き取りをしながら対応することも想定されているようですので、

検討する価値のある制度ではないかと思います。

 

申請から承認まではある程度の時間がかかるとのことであり、

申請した月にすぐに猶予されるというわけにはいかないようですので、

もし利用されるのであれば早めの対応をお勧めします。

年金事務所やハローワークでの感染等(2020/4/25)

年金事務所やハローワークでも、

職員の新型コロナウイルスへの感染が確認されたところがあります。

それぞれ一時閉鎖し、消毒等の対策を行ったうえで、再開をしたりしているようです。

また、感染者の有無にかかわらず、窓口業務の縮小などで感染拡大の防止に努めている模様です。

 

いずれにしても、今は直接窓口に行って手続きをすることはお勧めできません。

郵送や電子申請の方法での手続きをお勧めいたします。

 

これを機会に電子申請に取り組んでみるのは前向きなこととも考えられます。

ただ今年の4月1日から、一部法人での電子申請の義務化が行われたこともあり、

残念ながら、それはそれで問い合わせ等が混雑している状況のようです。

 

弊所では従来から電子申請での手続きを行っているところですが、

上記のようにコロナと電子申請義務化に加え、そもそも年度始まりということも相まって、

例月よりも行政の処理に時間がかかっているように感じます。

(それでも郵送による方法よりはかなり早いと思います。)

 

今は誰しもがそうなのですが、

行政の職員の方々もコロナの脅威を感じながら作業をしていると推測します。

一方で、平素適正手続きを行っている経営者や労働者の皆さまのために、

社会保険や雇用保険はこのような状況でこそ機能してもらわなければなりません。

 

現在、国会でコロナに対する次の政策を議論しているところです。

是非、より有効な施策を展開していただきたいと思います。

新型コロナに関する当面の対応方針(2020/4/18)

新型コロナウイルス感染症の長期化に備え、弊所の当面の対応方針を定め、

昨日(令和2年4月17日)全てのお客様にメールにてご案内いたしました。

 

以下のような内容を定めたものになります。

・訪問の自粛

・WEBの活用

・弊所代表のコロナ感染等の場合の連絡

・弊所の業務不能時の代替手段

 

個人事務所は、その性質上、業務遂行が個人に依存します。

弊所においても、代表が職務を行えない場合には、事業活動が停止します。

事業活動の停止が長引けば、お客様が困ります。

その対応の目安になればと考えて策定した次第です。

 

突き詰めて考えると、弊所の事業活動が停止した場合の代替手段は、

弊所にご依頼いただいていた業務を、お客様の自社内で継続するか、

他の社会保険労務士事務所などに契約を移行するか、ということになります。

事業の継続性において、個人事業に難があるのは否めません。

 

実はこの問題は、コロナにかかわらず、かねてより考えていたところです。

ただこれを外部に発信することは、弊所の弱い部分をあえて発信することになり、

これまで踏み切ることができずにいました。

 

しかし、コロナの長期化が予想される中、

不測の事態への備えは必要であろうと考えるに至りました。

自分もかかるかもしれない、又は、かかっているかもしれない。

その意識をもって過ごしたいと思います。

Web上で打合せ可能なシステムの検討(2020/4/11)

令和2年4月7日、安倍総理により、

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発出されました。

小池都知事からはそれ以前より、繰り返し外出自粛要請も出ているところです。

 

この状況を受け、労務管理についてのお問い合わせが多くなっている状況です。

しかしながら、弊所としても外出や直接の接触は極力控えたいと考えており、

Web上で打合せができないかシステムを検討しています。

 

限定的に運用してみたところ、やはり直接お会いできた方がよいようには思いました。

しかしながら、直接会うことが困難な状況下で、画面と音声そしてファイル共有などを通じて、

電話では共有できないものが共有できることは、やはり効果があると感じました。

 

一方で、運用やセキュリティの観点などはより検討が必要であり、

臨時的、限定的な実施という形にすべきかなとも考えています。

 

テレワークと聞いて、うちでは無理だ、と諦めてしまう方がいらっしゃいます。

もちろん不可能な業務はあります。

しかし実はできる部分もあるのに、検討すること自体を諦めている方もいるように感じます。

 

ルール、セキュリティ、コスト、そしてモラル等の課題はあると思いますが、

全ての業務をテレワークにしなければならないわけではなく、

一部の業務でもテレワークにできれば、人との接触を減らすことは可能だと考えます。

また、コロナ後の働き方にも活用できると思います。

 

緊急事態宣言の期間が終了したとしても、ウイルスは消えません。

目先のことで手いっぱいの方も多いと思うのですが、

可能であれば、長期戦に備えた準備も必要ではないかなと思います。

令和2年度雇用保険料率(2020/4/4)

雇用保険法等の改正法案が令和2年3月31日に国会で成立し、

令和2年度の雇用保険料率が厚生労働層のHPにアップされました。

令和2年度も、昨年度に引き続き変更無しとなっています。

 

具体的な保険料率は以下のとおりです。 

●一般の事業          9/1000

 うち、労働者負担:3/1000、事業主負担:6/1000


●農林水産・清酒製造の事業 11/1000

 うち、労働者負担:4/1000、事業主負担:7/1000


●建設の事業          12/1000

 うち、労働者負担:4/1000、事業主負担:8/1000


下記のURLより、厚生労働省ホームページをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html

 

なお、高年齢労働者の雇用保険料の経過措置の終了に伴い、

この4月1日からは高年齢労働者についても雇用保険料の納付が必要になりますのでご注意ください。

(2020/3/20のブログをご参照ください)

 

コロナの状況は日増しに悪化しており、

本日、東京都では1日で感染が確認された方の数がついに100人を超え、118人となりました。

もちろん早期収束を強く願うところですが、

治療方法や薬やワクチンの開発には時間がかかりそうで、長期化が見込まれています。

 

政府は雇用調整助成金などの利用を促していますが、

利用するためには法定帳簿等を整備しておくなど、適切な準備が必要です。

ご利用を検討されている方におきましては、準備を怠らないようご留意ください。

なお、弊所では助成金は扱っておりませんので、ご了承ください。

令和2年度の予算成立(2020/3/28)

令和2年度の国の予算が、昨日3月27日に成立しました。

一般会計総額が102兆6580億円と過去最大になったとのことですが、

この予算にはコロナによる影響が含まれていないようです。

 

予算が成立しなければ、4月1日以降の行政が止まりかねません。

現下の状況にあって、厚生労働省や経済産業省などの行政が止まることがあってはなりません。

その意味で、予算が年度内に成立したことは良かったと思います。

 

しかし、成立した予算はコロナの影響が入っていないので、

収入面でも支出面でも、直面している課題に対処できないでしょう。

国会は早急に補正予算に取り組むことになります。

 

本日18時から行われた安倍総理の記者会見でも、

雇用の維持が重要である旨の発言がありました。

この補正予算は非常に重要なものになるので、

迅速かつ有意義な議論が進められることを願っています。

 

ただし、コロナの収束が見えていない状況では、

人の行動を促すことができないので、経済を活性化することはできないと考えます。

補正予算も、当面の対応に終始せざるを得ないのではないでしょうか。

 

特効薬もワクチンも、医療体制も、短期間での劇的な改善は望めないようです。

当面はコロナとの共生方法を模索することになると考えます。

 

まだ影響を直接感じていない企業などでは、

具体的な対応を検討していない企業も見受けられます。

しかし長期戦になればなるほど、影響は広く深くなるはずです。

働き方を変えることにも挑戦しなければいけないのかもしれません

高年齢労働者の雇用保険料の経過措置終了(2020/3/20)

東京では例年より早い桜の開花宣言が出され、新年度が近づいてきました。

新年度から改正されるものがいくつかあります。

給与計算に関わってくるものがあるので、そのうちの一つをご紹介します。

 

平成29年1月に施行になった改正雇用保険法において、

65歳以降に新たに雇用される方も雇用保険の適用対象とすることになりました。

(それまでは、65歳以降に雇用された方は雇用保険の適用除外となっていました)

これは、65歳以上の高年齢者の雇用が一層推進されることを目的とした改正です。

 

ただし経過措置として、平成29年1月1日から令和2年3月31日までの間は、

高年齢労働者(※)に関する雇用保険料は免除されていました。

しかし、この令和2年4月1日からは、高年齢労働者についても、

他の雇用保険被保険者と同様に雇用保険料の納付が必要となります。

 

(※)保険年度の初日(4月1日)において満64歳以上である労働者であって、

   雇用保険の一般被保険者となっている方を指します。

 

詳細は、下記のURLより、厚生労働省ホームページをご参照ください。

https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/content/contents/000612474.pdf

 

よって、給与計算においても、ご本人負担分を控除する必要が出てきます。

うっかりしていると、労働保険料の適正な申告を行うことができず、

また、会社負担分とご本人負担分が不均衡になってしまう可能性があります。

ご担当者の皆さま、ご注意ください。

2020春闘(2020/3/14)

令和2年の春闘は、3月11日が集中回答日でした。

連合のHPでは、第1回回答集計のプレスリリースが掲載されています。(以下、一部抜粋)


・平均賃金方式では集計組合数は577組合(昨年対比49組合減)

 回答額は5,841円(昨年対比812円減)

・300人未満の中小労組では、集計組合数は280組合(昨年対比増減無し)

 回答額は5,255円(昨年対比131円減)

・非正規労働者の賃上げ(加重平均)は、時給で30.49円(昨年対比2.95円増)

 月給は5,710円(昨年対比1,089円増)。

 

さらに細かく見ていくと、100人未満の中小労組では、

昨年の賃上げ回答が4,908円だったのに対し、今年は4,905円(集計組合数は155組合)です。

賃上げ自体は行うものの、人数規模の大きな会社ほど賃上げの額は下がっており、

人数規模の小さな会社ほど昨年と同程度の賃上げにとどめるという傾向がうかがえます。

 

また、非正規労働者の賃金に関しては、

同一労働同一賃金法の影響が賃上げに表れているのではないかと推測します。

 

新型コロナウイルスの影響が急速に広がっており、底が見えません。

すでに新型コロナウイルスに関連する倒産や内定取り消しなどの報道もあります。

少しでも早い終息を願い、できる努力を重ねたいと思います。

 

今日は東京で桜の開花宣言が出た一方で、雪交じりの冷たい雨が降っています。

春は来ましたが、取り巻く環境は厳しいようです。

令和2年度協会けんぽの保険料率(2020/3/6)

令和2年度の協会けんぽの健康保険料率及び介護保険料率が、

協会けんぽのHPに掲載されています。

 

東京都の健康保険料率は9.87%(平成31年度9.90%)となり、前年度比で0.03%下がっています。

介護保険料率は、1.73%から1.79%へ引き上げとなっています。


これらの保険料率は、一般の被保険者は3月分(4月納付分)より、

任意継続被保険者については4月分(4月納付分)から適用となります。


なお、東京近県の協会けんぽの健康保険料率は以下のようになっています。

 埼玉県  9.81%(平成31年度9.79%)

 千葉県  9.75%(平成31年度9.81%)

 神奈川県 9.93%(平成31年度9.91%)

 

詳細は、下記のURLより、全国健康保険協会(協会けんぽ)ホームページをご参照ください。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3130/r2/20207/

 

まさに今日から、新型コロナウイルスのPCR検査の保険適用が始まりました。

今年は異様な状況にあります。

こういう時こそ、やるべきことをしっかりやっておくことが安心につながります。

健康保険についても、しっかりと適正な手続きをお願いいたします。

自宅待機による休業手当(2020/2/29)

新型コロナウイルスに対する認識が大きく変わった一週間だったように思います。

安倍総理からは大規模イベントの中止等、全国小中高校等の休校の要請などがあり、

北海道では緊急事態宣言が出され、世界的な株安に歯止めがかからないなど、

状況が切迫していることがうかがわれます。

 

弊所でもお客様から、他の会社ではどうしているのかといったお問い合わせがありました。

報道を見れば、大企業ではテレワークや時差出勤なども進めているようですが、

弊所でお付き合いのあるような中小企業では、なかなか多くのことはできず、

知る限りでは、一定の条件の方に自宅待機を命じたという例があるだけです。

 

さてこの自宅待機、会社が従業員に命じた場合には、休業手当を支払う必要があります。

 

労働基準法第26条

使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、

その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

(労働基準法第27条の出来高払制の保障給の規程も参考になります。)

 

休んだからと言って、その分の給料を払わなくていいというわけではありません。

逆に、百分の六十以上払っても、労基法上の問題はありません。

難しいのは、先が見通せない中で会社がどこまで対応するか、

長引くかもしれないと考えれば、容易には判断できないというところかもしれません。

 

また、上記の「平均賃金」というのは計算が決められています。

実際に計算すると、一般的な感覚で計算した6割よりも低く感じるのではないかと思います。

後日のトラブルを避けるため、対象者には事前に説明をすることをお勧めします。

 

今の状況が長引くことは、誰にとっても好ましいことではないと考えます。

事態の終息のために、自宅待機が必要なこともあると思いますので、

上記のような点にご注意ください。

テレワークとは何でしょう(2020/2/23)

新型コロナウイルスの影響で、テレワークに注目が集まっています。

かねてより政府もテレワークの推進を図ってきたところですが、

やはり企業活動に支障が出てくると、緊急度合いが異なるようです。

 

ところで、テレワークとは何でしょう。

日本テレワーク協会のHPによれば、

「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと」とあり、

「tele=離れた所」と「work=働く」を合わせた造語ということです。

 

また、働く場所によって以下の3つに分けています。

・自宅利用型テレワーク(在宅勤務)

・モバイルワーク

・施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務など)

 

上記のモバイルワークは、顧客先や移動中に、パソコンや携帯電話を使う働き方、とされており、

この定義であれば、図らずもテレワークを実施している会社もあるのではないかと思います。

テレワーク導入に関する懸念はいくつか聞かれるところですが、

職場に出勤しない働き方というのが、これまでに無かったわけではないということです。

 

ただどうしても管理者側からは目が行き届かないところが出てしまうので、

管理や評価、働き方のルール、コミュニケーション方法などは

実態に沿った仕組みを考える必要があると思います。

 

また、職場に全く出てこないということではなく、

月に〇日、週に〇日、または1日のうちでも午前だけ午後だけなど、

部分的な導入をしてみるのも工夫の一つだと思います。

 

残念ですが、まだしばらくはこの状況は続きそうです。

働き方を考えるきっかけとして捉えてみてはいかがでしょうか。

 

参考:日本テレワーク協会HP

https://japan-telework.or.jp/

育児休業給付金の給付率引き上げの検討(2020/2/16)

育児休業中の労働者の経済的支援のため、雇用保険には育児休業給付金の制度があります。

現在の制度では、育児休業開始後6カ月までは休業前の給与の約67%、

その後子が1歳(最大で2歳まで延長あり)になるまでは約50%が支給されています。

先日、政府がこの給付率を80%に引き上げることを検討しているとの報道がありました。

 

育児休業給付金は所得税が非課税で、

かつ育児休業期間中は社会保険料も免除されることから、

休業前の給与の80%が支給されることになると、

休業前とほぼ同等の手取りが給付されることになります。

 

経済的に支援することで男性の育休取得率を上げ、

子どもの出生数の向上につなげたいという理由があるそうです。

2018年度の育休取得率は、女性が82.2%である一方、男性は6.16%にとなっており、

経済的支援を手厚くすることで、この男性の育休取得率を上げたいという思惑のようです。

 

ただ、日本は休みを取りにくいという風習がなかなかぬぐえません。

働き方改革の中で、有休の取得義務化が昨年4月からスタートしましたが、

これもそもそも有給休暇の取得がなかなか進まないことから行われた法改正です。

 

経済的支援が取得率の向上にどれだけ結びついていくのか。

給付をするということは、その分を誰かが負担します。

より議論を深めていただきたいと思います。

高齢者の就業機会の確保及び就業の促進など(2020/2/8)

今年1月17日付のブログで賃金請求権の消滅時効の延長について記載しましたが、

その改正案が2月4日に国会に提出されました。

それと同時に、雇用保険法等の一部を改正する法律案が提出されました。

 

雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要は、以下の3点となります。

1.高齢者の就業機会の確保及び就業の促進

2.複数就業者等に関するセーフティネットの整備等

3.失業者、育児休業者等への給付等を安定的に行うための基盤整備等

 

このうち、高齢者の就業機会の確保及び就業の促進について、以下のような内容になってます。

①65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置を講ずることを

 企業の努力義務にするなど、70歳までの就業を支援する。(令和3年4月施行)

②雇用保険制度において、高年齢雇用継続給付を令和7年度から縮小するとともに、

 65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置の導入等に対する支援を雇用安定事業に位置付ける。

 

詳細は以下の厚生労働省のHPをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/201.html

 

これまで、65歳までの雇用を確保しようとしていたところから、

70歳まで働けるように仕組みを変えようとする意図が見えます。

以前から議論されていたところではありますが、とうとう具体的になってきたなと感じます。

 

興味深いのは、①の高年齢者就業確保措置に、雇用以外の措置として、

「継続的な業務委託契約」や「社会貢献活動に継続的に従事できる制度」が入っていることです。

単に雇用という形ではなく、様々な形で社会を支える仕組みを作ろうとしているようです。

 

社会を支える能力のある方にどのように活躍していただけるか、

確かに雇用に固執する必要は無いと感じますので、ぜひ議論を進めていただきたいと思います。

新型コロナウイルスと就業制限(2020/2/2)

令和2年1月27日、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症を、

感染症法上の「指定感染症」に指定しました。

さらにその施行日について、当初は2月7日としていましたが、2月1日に前倒しとなりました。


会社の就業規則にも、病者等に対する就業禁止等が定められていることがあります。

一般的には、労働安全衛生法や労働安全衛生規則に基づいて作成されていることと思います。


労働安全衛生法第六十八条(病者の就業禁止)

事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、

厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。


労働安全衛生規則第六十一条(病者の就業禁止)

事業者は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止しなければならない。

ただし、第一号に掲げる者について伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。

 一 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者

 二 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかつた者

 三 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかつた者

2 事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、

あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。
 

実は感染症法上の就業制限と労働安全衛生法上の就業制限は直接リンクしていません。

そしてこれらは、基本的に感染した者への対応になります。

 

働く場としてまず問題になってくるのは、感染が判明した者というよりは、

感染の疑いがある者やいわゆる濃厚接触者などへの対応が多いのではないかと思われます。

これらについては、就業規則の中で、報告義務を定めておいたほうが良いかもしれません。

 

また、労働安全衛生法には健康診断の規程もあり、

就業規則もそれに基づいて定めているのが一般的だと思われますが、

この場合、今回のケースのような健康診断は定めていない可能性があるのでご注意ください。
 

実際の対応としては、欠勤や有給でお休みをとっていただくことはもちろんですが、

特別休暇や休職規定、在宅勤務制度などがあれば、より柔軟な対応を取ることも可能でしょう。

一方で、会社側から不就労の要請をする場合には休業手当の問題も出てきます。

また、人権に対する配慮も必要です。


感染症は一つが終息しても、またいつか別のものが発生します。

これを機に社内のルールを見直しても良いかもしれません。

 

そうは言っても病気にならないのが最善です。

皆さま気を付けてお過ごしください。

とるだけ育休(2020/1/24)

小泉進次郎環境大臣が、日本の閣僚として初めて育児休暇を取得するという報道がありました。

3か月の間に、テレワークなども活用して、合わせて2週間程度の育児休暇を取得するとのことです。

 

国務大臣は労働者ではないので、もともと労働時間があるわけでもなく、

公務最優先、危機管理万全という条件のもとで育児の時間を確保するとしています。

大臣ということもあり、賛否両論あるようですが、弊所としては前向きなことと捉えています。

 

また一方で、母親向けの情報発信をしている会社が、

育児休業を取得した男性が、育児に十分な時間を割いていない

「とるだけ育休」が生じているという調査結果を公表しました。

 

その調査によれば、育休を取得した男性のうち、

32.3%は家事育児時間が2時間以下、47.5%は3時間以下となっています。

一方で、8時間を超える家事育児時間の方は、20.1%いるようです。

 

私見ですが。男性側も育児に参加したくないわけではなく、

どのように処すればよいのか分からない方も多いのではないでしょうか。

実は出産前の準備が大事な気がします。

準備が充実すれば、短時間でも効率的にできることがあるのではないでしょうか。

 

子どもを育てることは、社会経済全般において、とても重要です。

母親も、父親も、他の同世代も、さらに上の世代も、直接に間接に関わる必要があると思いますが、

それはつまり、社会全体で次世代を育む仕組みを作る必要があるということだろうと考えます。

日本の将来が明るいものであることを願います。

賃金の請求権の消滅時効の延長(2020/1/17)

令和2年1月10日、厚生労働大臣が労働政策審議会に諮問した

「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」について、

労働政策審議会の労働条件分科会で審議が行われ、答申が行われました。

 

その内容は、主に、労働者の賃金(退職手当を除く)の請求権の消滅時効を原則5年間に延長し、

ただし経過措置として、当面の間は3年間とするというものです。

 

詳細は以下の厚生労働省のHPをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08856.html

 

現在の賃金の請求権の消滅時効は、2年間とされています。

一方で、平成29年の民法改正によって債権の消滅時効に関するルールが見直され、

消滅時効期間は原則として5年間とされました。

 

民法上で原則5年間となったにも関わらず、

労働基準法でそれを下回る2年間としているのは、どうなのか、ということで、

かねて審議が行われており、その答申が出たということになります。

この改正は、今年の4月1日から施行されることとなっています。

 

この年末年始には、セブンイレブンの約5億円もの未払い賃金の報道がありましたが、

今後、賃金債権の消滅時効が2年間から3年間、そして将来的に5年間になることで、

未払い残業代などへのインパクトはかなり大きくなります。

 

もっとも、適正な勤怠管理、適正な給与計算が行われていれば、支障はないのですが、

適切にやっていると思い込んでいる会社も多いので、

まずは適法な給与計算についての知識を持っていただきたい、と願うところです。

ブラック企業大賞2019授賞式(2020/1/11)

令和元年12月23日、第8回ブラック企業大賞の授賞式が開催されました。

 

今回は以下の9社がノミネートされ、

大賞は三菱電機株式会社(メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社)が受賞しました。

 ・KDDI株式会社

 ・株式会社セブン-イレブン・ジャパン

 ・株式会社電通

 ・株式会社ロピア

 ・長崎市

 ・トヨタ自動車株式会社

 ・三菱電機株式会社(メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社)

 ・吉本興業株式会社

 ・楽天株式会社

 

個々のノミネート理由については、ブラック企業大賞HPをご参照ください。

 

報道で注目されていたのは、

セブン-イレブン・ジャパン、電通、そして吉本興業といったところでしょうか。

 

電通については、東京五輪の開閉会式の企画演出を担当する方が

パワハラ行為で懲戒処分を受け、組織委の役職を辞任したとの報道がありました。

長年の風土や慣習は、容易に断ち切れるものではないとはいえ、

年明け早々に大変残念な気持ちになりました。

 

コンビニ業界もエンターテインメント業界も、その他の多くの業界でも、

染みついたものを改めるのは困難なことだと思います。

しかしながら、環境は変化し続けています。

適者生存。生き残るためには、変化への適応が欠かせないと考えます。

お気軽に
お問合せください

<受付時間>
10:00~18:00
※土日祝日は除く

ヤマシタヤ
社会保険労務士事務所

住所

〒102-0074 
東京都千代田区九段南3-8-11 飛栄九段ビル1001

受付時間

10:00~18:00

定休日

土日祝日