労働保険適用促進強化期間(2013/11/11)

厚生労働省では昨年に引き続き、今年も11月を「労働保険適用促進強化期間」としています。

東京労働局においても、労働保険が国の強制保険であることを周知し、積極的な加入勧奨等を行っています。

 

地域によって若干の温度差はあるかもしれませんが、

実際に労働局等のホームページを閲覧していると、周知広報活動が主なようです。

 

そのため、喫緊の不安をあおるようなものではありませんが、

労働保険(労災保険・雇用保険)は、原則一人でも従業員を雇っている事業について加入義務があります。

労働災害や失業等が発生した際に、保険給付等を行うことにより

労働者の福祉の向上・増進を図るための、政府が管掌する強制保険制度です。

 

加入手続きがまだお済みでない事業主の方は、この機会に是非ご検討ください。

マタニティ・ハラスメント(マタハラ)(2013/11/4)

連合の非正規労働センターはインターネットで「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)に関する意識調査」を行った。

2013年5月13日〜15日に実施され、在職中の20代から40代の女性626人から回答を得ている。

(JILPTの月刊誌『ビジネス・レーバー・トレンド』より)

 

「マタニティ・ハラスメント」とは、働く女性が妊娠・出産を理由として解雇・雇い止めされたり、

妊娠・出産にあたって職場で受ける精神的・肉体的なハラスメントのことを言う。

職場でどのような「マタハラ」経験があるかとの問い(複数回答)には、以下のような回答が挙げられていた。

妊娠中や産休明けなどに、心無い言葉を言われた 9.5%
妊娠・出産がきっかけで、解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導等をされた 7.6%
妊娠を相談できる職場文化がなかった 7.0%
妊娠中・産休明けなどに、残業や重労働などを強いられた 4.7%
妊娠中や産休明けなどに嫌がらせをされた 3.8%

なお、「自分はマタハラにあったことはない」とするマタハラ未経験者は74.4%との回答もある。

 

「マタハラ」を受け、どのような対応をしたかという問い(複数回答)については、以下のような結果となった。

 「我慢した・人には相談しなかった」  45.7%

 「家族に相談した」             35.8%

 「会社の同僚に相談した」        17.3%

 「会社の上司に相談した」        11.1%

 「会社の専門部署・担当者に相談した」 2.5%

 

また、職場で「マタハラ」が起こる原因について(2つ選択)は、以下の項目が挙げられている。

 「男性社員の妊婦・出産への理解不足・協力不足」 51.3%

 「会社の支援制度設計や運用の徹底不足」     27.7%

 「女性社員の妊婦・出産への理解不足・協力不足」 22.0%

 

全体的に、特に労働条件の不利益変更を伴う場合はリスクマネジメントとしても注意が必要であり、

その土壌として、発言や態度、企業風土も含め、職場での理解が重要であると言えるのではないだろうか。

ユニクロ名誉棄損裁判一審判決(2013/10/29)

ファーストリテイリングと子会社のユニクロが、名誉毀損で文藝春秋を訴えていた裁判で、

東京地裁は10月18日、原告側の請求をすべて退けました。

 

この判決は、従業員に過酷な労働をさせているとの週刊誌の記事などで名誉を傷つけられたとして、

ユニクロ側が文芸春秋に計2億2千万円の損害賠償などを求めていた裁判の一審判決です。

今回の判決に対し、ユニクロ側は「事実に反するものであり、誠に遺憾」とコメントしています。

控訴するかどうかは10月23日時点で明らかにしていないとのことです。

 

裁判の一方で、ユニクロ側も労働問題は認識しており、労働条件や社内制度の改善に取り組んでいました。

・国内ユニクロの全店長に対し、月3万円の「店長手当」と年12万円の「繁忙期手当」の支払い

・店長同士や本部社員との連携を深める「店舗課題解決ダイレクトミーティング」の開始

・新入社員を半年で店長に登用する制度の凍結(過度のプレッシャーで高い離職率につながっていた)

・入社2年目まで先輩社員がメンターとしてフォローする仕組みの導入

 

この裁判は名誉棄損の裁判ですが、やはりユニクロの労働問題は注目度が高いのではないかと思います。

成功している企業、世界的な企業は、いろいろな意味で研究され評価されます。

労働や雇用という問題に関しても例外ではなく、注目される企業の社会的責任の表れと言えるでしょう。

より多くの企業がより良い経営を目指せるよう、発展的な議論がなされることを期待します。 

東証第1部上場企業の2013年年末賞与・一時金の妥結水準調査(2013/10/21)

労務行政研究所のHPに「東証第1部上場企業の2013年年末賞与・一時金(ボーナス)の妥結水準調査」

という記事がアップされています。

 

東証第1部上場企業206社を対象に、

「夏冬型」の年間協定ですでに決定している2013年年末賞与・一時金の妥結水準を

調査・集計した(2013年9月13日現在)ものです。

 

「2013年夏冬型年間協定ですでに決まっている年末一時金」の支給水準は、

東証第1部上場企業の全産業ベース(206社、単純平均)で67万8793円、

昨年末の妥結実績(68万7103円)と比較すると、金額で8310円減、対前年同期比で1.2%減と、

2012年に引き続き微減となっています。

 

全体的に前年比マイナスになっている業種が多い中、

輸送用機器(自動車)が前年比10.9%増と気焔を吐いているようで印象的でした。

 

アベノミクスによる経済効果がいつ一般家庭に届くのかという議論があります。

この調査によれば、今年の冬の賞与でもなかなかそれは反映されないということだと思います。

ただし、この数値はあくまでも今秋交渉分を控えた現時点の速報集計です。

2013年上期の企業業績を考慮すれば、上向きの結果になる可能性はあります。

 

そしてやはり賞与だけではなく、景気回復には月々の給与の向上が必要です。

一般家庭が景気回復を実感するには、もう少しの辛抱が必要ということでしょうか。

平成24年の定期監督等(2013/10/14)

平成24年の東京労働局の管下18労働基準監督署(支署)が実施した定期監督等について、

以下のようなデータが公表されている。

 

1.実施件数と法違反件数

実 施 件 数: 8,964件(前年比3.5%(305件)増加)

違反事業場数: 6,474件(前年比5.4%(329件)増加)

違  反  率: 72.2%(前年比1.2ポイント増加)

 

2.定期監督等における労働基準法に関する主要な法違反    

 

15条

労働条件明示

24条

賃金不払

32条

労働時間

35条

休  日

37条

割増賃金

89条

就業規則

108条

賃金台帳

平成23年 1,285 429 2,359 127 1,737 1,435 638
平成24年 1,224 520 2,337 149 1,749 1,303 837
前年比 ▲61 +91 ▲22 +22 +12 ▲132 +199

3.送検事例

東京地方検察庁への送検  :62件(前年比8件増加)

刑事訴訟法に基づく強制捜査: 7件(前年比2件減少)

 

今後については、以下のような指導方針が掲げられていた。

「労働条件をめぐる問題点を的確に把握しつつ、効果的な監督指導を実施するとともに、法令違反を繰り返すなど悪質な事業主については、積極的に司法事件として捜査を行い、東京地方検察庁へ送検することとしている。」

 

今後の経済や規制緩和、雇用流動化等の政策動向によって、労働監督行政にも変化があるかもしれません。

今年8月には田村厚生労働大臣の若者の「使い捨て」が疑われる企業対策強化発言もありました。

しかし、労働基準法が変わったわけではないので、まずは基本事項の遵守が肝要であると思います。

平成25年度地域別最低賃金の改定(2013/10/6)

10/2(水)にはドラマ「ダンダリン労働基準監督官」を見ました。

平均視聴率は11.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だそうです。

ネット上での評価は厳しい意見が多いようですね。

 

さて、最低賃金が改正されます。

最低賃金を参考にして給与を決定している事業主様は、最低賃金を下回らないようご注意ください。

 

以下、東京近県のみ抜粋して記載します。

  最低賃金時給額 (平成24年度) 発効年月日
埼玉 785円 (771円) 平成25年10月20日
千葉 777円 (756円) 平成25年10月18日
東京 869円 (850円) 平成25年10月19日
神奈川 868円 (849円) 平成25年10月20日

地域別最低賃金で働いた場合の収入が、生活保護の給付水準を下回る逆転現象が問題になっていました。

今回の改定で、その現象があった11都道府県のうち、北海道を除く10都府県で逆転が解消するとのことです。

 

なお、9月分の給与計算では定時決定による標準報酬月額の変更や、

厚生年金保険料率の変更が必要になる事業所様もあると思います。

上記最低賃金の確認と合わせて、給与計算ソフトの設定等にご注意ください。

若者の「使い捨て」が疑われる企業の電話相談結果(2013/9/30)

ビジネス・レーバー・トレンドの2013年10月号に、9/1に厚生労働省が全国八労働局で実施した

若者の「使い捨て」が疑われる企業や事業所に関する無料電話相談の実施結果(速報)が掲載されています。

 

相談件数は1042件にのぼり、以下のような相談が多数を占めています。(複数回答)

・賃金不払い残業(53.4%)

・長時間・過重労働(39.7%)

・パワーハラスメント(15.6%)

 

年齢別にみると、20歳から39歳までで約半分を占めています。

これは、電話相談の実施タイトルを「若者の〜」と題したことの影響もあるかもしれません。

・30〜39歳(24.2%)

・20〜29歳(24.2%)

 

また、相談者は以下のような構成であり、ご家族の方からの相談が2割を超えています。

労災の裁判でもご家族が提訴する場合もあり、ご家族に対する配慮も重要になってきそうです。

・労働者本人(68.7%)

・労働者の家族(21.4%)

・その他(9.9%)

 

中には企業名を明らかにしたうえで、労基署の踏み込んだ対応を求めるものも少なくなかったとのことです。

厚生労働省の担当者は、

「来年度には夜間や休日に相談できる常設のフリーダイヤルを開設するなど、

これまで以上に対策を強化していく」と話しています。

 

先日は朝まで生テレビでブラック企業について討論をしていました。

政治が労働者の所得増加を目指す中で、監督署の規制は今後厳しくなっていくものと考えられます。

JR北海道に見る組織的課題(2013/9/24)

JR北海道の事故調査が進んでいます。

 

ニュースを見ていると、組織としての課題が多々あったのではないかという論調が見えてきます。

・経営と現場との風通しの悪さ

・40歳代の従業員が少なく、技術が世代間で伝えられていない

・赤字体質改善のため外注化を進めた結果、社内にノウハウが蓄積されていない 等

これらのひずみが、線路のメンテナンス不足という問題として表れてしまったのではないか、と。

まだ調査中ですが。

 

現在、規制改革会議での議論(前回ブログに掲載)や派遣労働の規制緩和のように、

雇用の流動化を促進する政策が検討されています。

終身雇用制度が終わったと言われて久しくなっていますが、

労働者が一つの企業に勤める期間は、今後さらに短くなっていくのではないでしょうか。

 

企業の技術やノウハウ、知識、経験は、それ自体が貴重な経営資源です。

中途入社や退職者が増えていく中で、その自社の強みをどのようにして保持していくか。

これは企業を継続させていくうえでとても重要なポイントになるように思います。

組織化するということは難しいことだと、改めて感じます。

 

ところで、今年のパ・リーグでは楽天ゴールデンイーグルスの優勝が目前に迫っています。

元監督だった野村克也さんが昨日のニュースで、

今の楽天を見てどう思われますかという質問に対して、以下のように答えていました。

「夢や目標を持ったチームは強い」

これが組織をまとめる原点かもしれません。

第15回規制改革会議(2013/9/16)

ただいま台風18号の影響で雨と風が強くなっています。

いつも以上に事故や災害にご注意ください。

 

さて、政府の第15回規制改革会議は9月12日の会議で、規制緩和策の検討項目を決めました。

そのうち雇用ワーキング・グループの検討項目(案)では、以下のような項目が上がっています。

 

「人が動く」ように雇用の多様性、柔軟性を高める政策を展開し、

女性にも男性にも働きやすい「失業なき円滑な労働移動」を実現させていくという視点から、

必要な規制改革を推し進める。

  1. 労働時間法制等の見直し(※)
  2. ジョブ型正社員の雇用ルールの整備(※)
  3. 労働者派遣制度の見直し(※)
  4. 有料職業紹介事業等の規制改革
  5. 労使双方が納得する雇用終了の在り方
  6. 研究者等の有期労働契約に係る環境整備

このうち、(※)の項目は、おおむね平成25 年内に検討結果をまとめることを予定しています。

その他の項目については、平成26年6月の答申に盛り込む方針とのことです。

 

「人が動く」基盤が作られるということは、経営者側にとってもその対応能力が問われることと思います。

各企業の人事戦略によって、良質な労働者の採用や定着に、より格差が表れる可能性があります。

政府の議論に注目しながら、自社に適した人材や制度について、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

長寿企業の実態調査(2013/9/9)

先週記載した「ダンダリン一〇一」のコミックは発売日が3年前(2010/09/22)でした。

残念ながら近くの書店では在庫が無く、購入は断念しました。

しかし、モーニングのサイトで第一話が無料で読めるようになっていました。ご参照ください。

 

http://morningmanga.com/news/939

 

さて、帝国データバンクで「長寿企業の実態調査」という特別企画がありました。

この調査では業歴が100年以上の企業を「長寿企業」として調査しています。

 

「長寿企業」の数なんと26,144社。そのうち1,410社が2013年に「長寿企業」となったそうです。

その数の多さにまず驚いたのですが、さらに驚いたのはその規模です。

「従業員10人未満」が16,287社で62.3%、「従業員50人未満」だと22,747社で実に87.0%を占めます。

年商ベースでは「年商10億円未満」が21,431社で82.0%だそうです。

つくづく日本は中小企業が支えているのだと、痛感しました。

 

100年前と言えば、労働基準法などありません。

法律どころか、様々な震災や戦争をすべて乗り越えてきているということです。

当然、経営者も労働者も何代も入れ替わっていることでしょう。

 

アベノミクスでは雇用の流動化なども含め、新陳代謝が一つの鍵になっています。

相続承継、業種変更、業態変更、開業、廃業。

今後も変化に柔軟に対応していくことが求められていくと思います。

そういった中で「長寿企業」は、とても重要なヒントをもたらしてくれるのではないでしょうか。

ダンダリン(2013/9/2)

連続でテレビ番組のネタになります。

10月より日本テレビで「ダンダリン 労働基準監督官」という水曜ドラマが始まります。

 

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以下、日本テレビのHPより抜粋です。

 

「それ、労働基準法違反です!!」

働く人を守るお仕事のルールを、まっすぐに貫く女・段田凛=ダンダリン(竹内結子)!!

彼女は、ルールを守るためなら曲がらない、止まらない…労働基準監督官。

 

「サービス残業」「名ばかり管理職」「パワハラ経営者」などブラック企業に立ち向かう!

「お仕事とは」「働くこととは」を思いながら、明日も元気で働こう!!

働く人を守るために、必死で働く人たちの物語です!!

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原作は2010年1月から「モーニング」に連載していた「ダンダリン一〇一」。

原作者は「カバチタレ」シリーズの田島隆さんだそうです。

 

奇しくもこの9月は「過重労働重点監督月間」になっています。

その直後からのドラマスタート。

労働基準監督官とブラック企業との対決が基本構造のようですが、どのような描かれ方になるのでしょうか。

とりあえず原作の漫画を購入してみようかと考えています。

バリバラ(2013/8/26)

NHKで「バリバラ」という番組をやっています。

深夜にテレビをつけるとやっていることがあって、たまに見ていました。

 

バリバラとは、バリアフリーバラエティーの略だそうです。

障害者の方のお悩み相談のような番組です。

普通では聞きずらいことも率直に話題になっていてとても参考になりました。

しかもドキュメンタリーと違って明るい雰囲気なので、視聴者としてもリラックスしてみることができます。

 

先日の放送では、今年の4月から障害者の法定雇用率が引き上げられたことがあり、就職がテーマでした。

とても恐縮ではありますが、相談者の方々のお話を聞いていると、就職は難しいように思いました。

働くにも介助者が常時必要であったり、どうしても遅刻してしまったり、躁鬱が繰り返し襲ってきたり。

よほどきちんとした環境と理解が必要でしょう。

 

障害者の方も、経済的にも精神的にも、働くことは必要であると思います。

一方で、事業体としては障害者の受け入れが難しいことも事実です。

双方とも「できない」とか「無理」という意識が先行してしまっている部分もあるようです。

また、いまだ景気回復の実感のない中、相互理解をするための余裕が無いということもあります。

 

障害者雇用は法的な規制が厳しくなることが予想される分野です。

私も社会保険労務士として、障害者雇用に携わる機会が出てくるかもしれません。

一般の就職も厳しい昨今ではありますが、少しずつでも障害者雇用の垣根が低くなればいいなと考えた次第です。

社会保険適用拡大についてのアンケート(2013/8/19)

独立行政法人労働政策研究・研修機構にて、社会保険(厚生年金・健康保険)の適用拡大が短時間労働者の雇用管理に及ぼす影響や、社会保険が適用拡大された場合の短時間労働者の対応意向等を探るため、事業所とそこで雇用されている短時間労働者を対象にアンケート調査を実施しています。

 

それによると、事業所側の対応については以下の項目がトップ3となっていました。

・「適用拡大要件にできるだけ該当しないよう所定労働時間を短くし、その分より多くの短時間労働者を雇用」:32.6%

・「短時間労働者の人材を厳選し、一人ひとりにもっと長時間働いてもらい雇用数を抑制」:30.5%

・「適用拡大要件にできるだけ該当しないよう、賃金設定や年収水準設定を見直し」:24.3%

 

全体的に見ても、「短時間化」か「長時間化」の二極化が進むように見受けられます。

 

一方、労働者側の対応としては、働き方を変えるかどうかについて

・変えると思う:61.8%

・変えることはないと思う35.9%

となっていました。

 

変えると思う方が、どのように変えるか、については以下の項目がトップ3となっていました。

・「適用されるよう、かつ手取り収入が増えるよう働く時間を増やす」:26.7%

・「適用されるよう働く時間を増やすが、手取り収入が減らない程度の時間増に抑える」:15.6%

・「適用にならないよう働く時間を減らす」:14.5%

 

ただし、無回答の方が36.3%となっており、対応を決めていない方が多いのではないかと推測されます。

 

社会保険料は労使共に大きな負担となり、雇い方、働き方に変化が起きるのは当然のこととでしょう。

一方で社会保険財政の健全化も重要な課題です。

消費増税も見えている中、根本的な社会保障の在り方をさらに議論する必要があるように思います。

若者の使い捨て企業対策(2013/8/12)

厚生労働省は8日、若者の「使い捨て」が疑われる企業(いわゆるブラック企業)等が、社会で大きな問題となっていることを受け、その対策を強化する方針を発表しました。

その柱として、以下の取り組みが挙げられています。

(1) 長時間労働の抑制に向けた集中的な取組み

(2) 9/1全国一斉の電話相談をはじめとした相談対応

(3) 職場のパワーハラスメントの予防・解決の推進

 

(1)の「長時間労働の抑制」に向けては、9月を「過重労働重点監督月間」に設定しています。

労働基準監督署やハローワーク利用者等からの情報などから、集中的に監督指導が実施されます。

昨年は約13万5千件の定期監督等が実施されていますが、今回は同期間中に約4,000件を予定しているということです。

 

時間外・休日労働が36協定の範囲内であるか、賃金不払残業がないかについて重点的に確認し、

長時間労働者については、医師による面接指導等、健康確保措置の確実な実施の指導などが行われます。

同省では「離職率が極端に高いなどの点に着目して監督指導を集中的に行うのは初めて」としています。

 

この方針は、田村厚労相が、いわゆるブラック企業に対する懸念を表明したことを受けたものです。

調査内容はこれまで行われてきた調査と同様ではありますが、対象企業の着眼点が変わりました。

ブラック企業という言葉に定義はなく、必ずしもブラック=法違反ではありません。

それを踏まえて、今回の取り組みがどのような効果をもたらすのか注目したいと思います。

限定正社員(2013/8/5)

アベノミクスのキーワードの一つに「限定正社員」という単語をよく聞きます。

「限定正社員」とはどのような社員なのでしょうか。

 

規制改革会議の鶴光太郎氏は日本経済新聞の記事で次のように述べています。

「…。日本も仕事の中身、勤務地、労働時間などを限定した正社員制度を普及させれば非正規から正規に移りやすくなる。…」

つまり「限定正社員」とは、仕事の中身、勤務地、労働時間が限定されている正社員のことのようです。

そして「非正規」から「正規」への移行を目的としているとのことです。

 

ただ、そもそも「正社員」の定義が存在していません。

「非正規社員」と「限定正社員」の区別も判然としません。

労働契約期間の有無を指しているのでしょうか。

また、総合職に対する一般職とか、地域限定採用などは以前から存在しています。

やはりまだ理解できないところが多くあります。

おそらくは、働き方の多様化を制度的にどう支援していくかという議論なのだろうと推測しています。

 

ただし、この議論が深まることで「正社員」とは何を指すのか、

どういう働き方の選択肢があるのか、といった理解が進むのは良いことなのではないかと思います。

少子高齢化、育児、介護などの社会的課題と向き合った時には、働き方の多様性は必須になるでしょう。

その一方で、働き方の多様化は、これまでのような画一的な雇用契約には適しません。

そのため、今後の雇用管理がますます重要性を増してくるように思います。

算定基礎届の定時決定時調査2(2013/7/29)

これまでのブログアクセスの中で、定時決定時調査に関するアクセスが群を抜いていました。

まだ始まって間もない制度であり、その対応や厳しさについての関心が高かったようです。

 

もう7月も終わってしまうので今年の定時決定時調査はひと段落になると思います。

8月以降は、呼び出しに応じなかった事業所への再呼び出しなどに移行していきます。

そのため来年まで関心は薄れていくとは思いますが、改めて記載してみたいと思います。

 

今回対応した事業所の中で特殊だったのは、被保険者が一人もいない、という事業所でした。

業績不振により従業員はいなくなり、役員報酬も設立当初より0円だったため、そのような状況になりました。

少し特殊な状況のため、保険料逃れを疑われるのではないかと若干危惧していました。

しかし、賃金台帳等の記録がしっかりしており、その背景の説明も十分に行えたため、15分程度で終えることができました。

 

資料は様々持参すると思いますが、適正な被保険者が加入していること、

また標準報酬月額が適正に手続きされていること、が調査の要点だと思います。

賃金台帳や源泉徴収の領収書も、そういった観点から確認をしています。

指定された資料ではなくても、それらを裏付ける資料があれば、調査対応に役立ちます。

 

まだ定時決定時調査を受けたことのない事業所も多々あります。

定時決定時調査は疑われて呼び出されているのではありません。

適正申告と記録保管がきちんとされていれば、スムーズに終わります。

 

前回の記事にも記載しましたが、大切なのは日常業務であろうと思います。

調査に限らず誰にでも説明できるように、日々の適正申告と記録保管を意識すること。

それは調査対応のみならず、経営管理にも役立ってくると思います。

第23回参議院議員選挙(2013/7/22)

7/21(日)に参議院議員選挙が行われました。

今回の選挙では、ねじれ国会が解消されるかどうかが1つの焦点だったと思います。

結果は、皆さんご存知かと思いますが、以下の通りです。

  自民 公明 民主 維新 みんな 生活 共産 社民 みどり その他
議席 65 11 17 8 8 0 8 1 0 3
増減 +31 +1 -27 +6 +5 -6 +5 -1 -4 -5
選挙後 115 20 59 9 18 2 11 3 0 4

(Yahoo!みんなの政治 参議院選挙2013より) 

 

結果、ねじれ国会は解消となりました。

これまで進まなかった議論も、今後は進展があるのだろうと思います。

 

さて、今回はネット選挙解禁という触れ込みでしたが、その効果はどうだったのでしょうか。

個人的にいつも気にしているのは投票率です。

今回の投票率は全国平均は52.61%で、前回2010年の57.92%を5.31ポイント下回り、過去3番目の低さだったとのことです。

この数字を見ると、ネット選挙は功を奏さなかったようです。

 

低い投票率は組織票のある政党に有利になります。

その状況が反映された結果になったのではないかと思っています。

 

国の根幹を決めるのが選挙です。

できるだけ多くの方の意見が反映されることを切に願います。

就職活動スケジュール変更に関する調査結果 (2013/7/15)

日経HRが、就職活動を経験した大学4 年生と、大学就職支援やキャリア教育に関わる大学教職員を中心に、2016 年春卒業予定者(現大学2 年生)の就職活動スケジュールの変更(就活解禁3 年12 月→3 年3 月 選考開始4 年4 月→4 年8 月)に関するアンケート調査を実施しました。


就活解禁時期が「3 年生の3 月」に移ることに対して

・大学4 年生:「賛成派」が29.4%、「反対派」が70.6%。

・教職員:「賛成派」が58.7%、「反対派」が41.2%。

 

選考開始時期が「4 年生の8 月」に移ることに対して

・大学4 年生:「賛成派」が19.3%、「反対派」が80.7%。

・教職員:「賛成派」が47.7%、「反対派」が52.3%。

 

数字からは、活動時期が遅れることについて、学生は反対の比率がかなり高いことが伺えます。

記事には賛成や反対の個々の意見も一部掲載されていました。

文理の教育の違いや、学業と就活の両立に関する考え方の違い、など、個々人で様々あることも読み取れました。

 

常々言われることですが、そもそも「新卒一括採用」自体に課題があるようにも思います。

総務省が12日発表した2012年の就業構造基本調査によると、非正規労働者の総数(推計)は2042万人と初めて2千万人を超え、雇用者全体に占める割合も38.2%と過去最高となっています。

年功序列制度が崩壊し、雇用の流動化が進められる中、新卒採用の考え方も見直しが必要なのかもしれません。

高速バスの事故(2013/7/8)

7/4の未明に、東京発山形行きの高速バスがガードレールなどに衝突するという事故がありました。

 

昨年の4/29には、関越自動車道で乗客7人が死亡した高速ツアーバス事故がありました。

この事故を受けて、運送業に対する監督が厳しくなった、と労働基準監督署に勤める知人が話していました。

 

今回の7/4の事故では、現場は緩やかなカーブで、バスはガードレールや中央分離帯に衝突し、男性の乗客が運転手の意識がないことに気づき、バスを停止させたそうです。

運転手はお亡くなりになっており、司法解剖の結果、死因は虚血性心疾患だったことが分かっています。

県警高速隊は運転中に意識を失ってしまったのではないかとみているそうです。

 

人や物の輸送は経済の大動脈であり、欠かすことのできない仕事だと思います。

また高速での大型車両の事故は深刻な事態に直結します。

安全で安心な輸送が実現し、このような事故が無くなることを願っています。

算定基礎届の定時決定時調査(2013/7/1)

算定基礎届は原則として郵送による提出となっています。

しかし、厚生年金等の適用の適正化を図るため、4年に一度程度の割合で定時決定時調査が行われることになっています。

対象事業場には封書で通知が届き、調査の日時や場所が記されています。

 

算定基礎届の提出期間は7/1〜7/10ですが、今回の調査は6月中に行われました。

当日は雨であり、本来の期間よりも早かったせいか、調査会場はまだ空いていました。

持参した資料は以下に一覧しますが、すべての資料に目を通していました。

概要を確認しつつ、気になったところに目をとめて質問を受けるという流れでした。

所要時間は20分程度であったと思います。

 

誤りがあれば、原則2年間遡及して訂正を指示されます。

今回、私が対応させていただいた事業所様では特に指摘事項はなく、算定基礎届が無事受理されました。

受付印は当日ではなく、7月1日でした。

 

隣の方は随時改定についての指摘を受けているようでしたが、不慣れな方が理解するのは難しいように思いました。

 

日常の中では、やはり記録の保管に努めることが大事だろうと思います。

今後もこの適正化への調査は厳しくなることが予想されます。

少なくとも不正等の誤解を受けないためには、記録によって説明できることが大切です。

調査を受けた時だけではなく、日々の業務を大切にしていただければと思います。

 

<準備資料一覧>

①算定基礎届

②算定基礎届総括表

③算定基礎届総括表附表

④賃金台帳、出勤簿等

⑤源泉所得税領収書

⑥5/10以降届出済の適用関係諸届

対象者がいる場合は、厚生年金保険70歳以上被用者算定基礎届などの資料も必要です。

その他の資料が必要な場合もありますのでご注意ください。

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