在職老齢年金制度の見直し議論(2019/11/29)
60歳以上の方で、厚生年金を受給している方が働いている場合、
一定以上の収入があると、年金額を抑制する「在職老齢年金」という制度があります。
これは、給付と負担のバランスの中で、
稼ぎの多い方には少し年金支給を抑えさせてもらおうというものです。
この制度は、働くと、もらえる年金が抑制されることになるため、
まだ働ける方がいても、その意欲を阻害するのではないかという意見があります。
そのため、この制度の廃止や、収入の基準を上げることで、
働く意欲が阻害されないようにしてはどうかという議論がされています。
廃止や基準の引き上げを行った場合、年金支給額が増えるため、年金財政にはマイナスです。
また、高収入の方への優遇になるため、反対意見も多いようです。
特に廃止というのはインパクトが大きく、現実感が薄いように思いますが、
基準引き上げも難しいようで、とりあえずは現状維持の見通しのようです。
本来的に、年金制度は保険料を拠出した方に対し、それに見合う給付がなされることが原則です。
それを考えると、在職老齢年金の制度自体が原則に反する考え方ではあります。
ただ一方で、給付と負担のバランスを図り、
所得の再分配を行うことも政策的に必要なことだと考えます。
日本には定年制度が根付いていますが、在職老齢年金の制度も定年と密接に関係しています。
いつまで働くかということを年齢で区切ることは、分かりやすい半面、
その考え方自体が、働ける人を働かない人に変えてしまっているのかもしれません。