労働基準監督業務の民間活用(2017/9/30)
今年の5月に、第3回「労働基準監督業務の民間活用タスクフォース」が行われ、
その取りまとめの資料が内閣府のHPで公表されています。
要は、労働基準監督官が少ないので、民間を活用したらどうだろうかという議論の資料です。
同資料によれば、近年の労働基準監督業務は、
総事業場数に対する定期監督を実施した事業場数の割合が3%程度にとどまっている一方で、
定期監督を実施した事業場数のうち違反事業場数は約7割と、高い割合で推移しています。
また、監督官の数は、日本では雇用者1万人当たりで0.62人となっていますが、
ILO(国際労働機関)が求めている、1万人当たり1人という水準に達しておらず、
ドイツ1.89人、イギリス0.93人、フランス0.74人などと比べると低い数値です。
確かに、3%という実施率は低いと言わざるを得ません。
しかも違反率が高いので、監督行政の強化は避けられないように思います。
ただ一方で、行政指導を民間に委託することには、疑問もあります。
本旨たる労働者の保護が図られるのか、癒着や行政の歪みなどが起きないだろうか。
公権力の一部を民間が持つことによるリスクは、これも避けられない気がします。
シンプルに、人手不足ならば、行政の増員は望めないものだろうかと思います。
労働基準監督官の定員数は、一定の増加をしているそうなのですが、でも足りない。
ではやはり、民間委託ということになるのでしょうか。
大切なことは、働くことで身体生命や生活が脅かされない社会を築くことと考えます。
人手不足解消の方策も、その観点から議論が進むことを願います。